1. 森と湖の都 ヘルシングランド
(前半省略)
それにしても、この地域は林産業が盛んであるにもかかわらず、豊富な原材で新しい家をどんどん建て替えるといったことをあまりしない土地柄だ。およそ中世期の頃からのものとさえ思われる古い木の家を、風化により木肌がボロボロに痩せてもなお使い続ける。それが家族の誇りなのだと言う。補修、あるいはやむをえない事情により建て替える時も、必ず前と同じ意匠の家を造る。そうして、家族の象徴であり家紋のような意味合いを持つポーチの飾りデザインを代々継承するのは、この地域独特の風習だ。
現に、何百年と経ったような木造家屋が、保存ではなく、普通に住まわれているという事実に感動せざるをえず、そんな古い木の家をじっと見つめていると、本当に何百年も前にそこに住んでいたであろう人たちの息づかいを感じ、その姿までもがこの目に見えてくるような気がする瞬間がある。
そうした地域の建物群が文化財にも認定されず、当たり前のようにスウェーデンのあちこちに残っているという文化こそ、実に慈しむべき宝だと思う。
目次
(※青色のページが開けます。)
プロローグ
第一章 旅立ちの時
- ストックホルムの光と影
- この国との出会い
- 晴天の雲の下
- バックパッカー デビューの日
- 袖すれあう旅の縁
- 百年前の花屋は今も花屋
- 郷愁のガムラスタン散歩
- バルト海の夕暮れ
- 船室での一夜
- これぞ究極のアンティーク
- 古(いにしえ)の里スカンセン
- 過信は禁物-1[ストックホルム発・ボルネス行 列車での失敗]
- そして タクシー事件
第二章 解放の時
- 森と湖の都ヘルシングランド
- 森の木に抱かれて
- 静かなる自然の抱擁
- 小さな拷問
- 私は珍獣パンダ
- ダーラナへの道-左ハンドルのスリル-
- Kiren
- 故郷の色"ファールン"
- ダーラナの赤い道
- ダーラナホースに会いにきた
- ムース注意!
- 白夜の太陽
- 過信は禁物-2[ボルネス発・ルレオ行 またも列車での失敗]
第三章 静寂の時
- 北の国 ルレオでの再会
- 雪と氷のサマーハウス
- 白夜の国のサマーライフ
- 焚き火の日
- ガラクタ屋とスティーグ
- ミスター・ヤンネ と ミセス・イボンヌ
- 田んぼん中の"ラーダ"
- 中世の都 ガンメルスタード
- 余情つくせぬ古都への想い
- 流氷のささやきに心奪われ
- 最後の晩餐-ウルルン風-
- 白夜の車窓にて
- ストックホルムのスシバー
- 旅のおまけ["モスクワ"フシギ録]
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