2010/08/13
長峰山頂……雲間の光と夜景
夕立ちの後の透明な空気感が心地いい。
山向うの西陽は一そう眩しく、雲間からは光の柱が延びている。
我が家からこんな近い処で、ちょっとした旅気分に浸れる小さな幸せに私は満足していた。
ここは、高瀬川と犀川の合流を眼下に見る、「長峰荘」という安曇野市営の湯宿。
8月14日の花火見物をする場所の下見を兼ね、老母を伴い湯をつかいに登ってきた。
天然温泉ではないが、安曇平が一望できる絶景の場所であり、かつて此処に、川端康成、井上靖、東山魁夷の三巨匠が会し、その時、川端氏は「残したい静けさ、美しさ」と評し揮毫したという。
かるく閉じた目蓋を西陽に向けると、なにか懐かしい記憶が蘇るような気分になるのはどうしてなんだろう。
数カ月間の忙殺の日々が嘘のように癒され、消えてなくなる。ふと、涼しい風が、露天に腰かける私の頬をなでて通った。
後から入ってきた爺さんが良い調子で詩吟を唸りだすと、それに刺激されてか、父親に連れられた小さな女の子が、「♪お馬の親子は仲良しこよし……」と可愛いらしく対抗する。
嗚呼、こんな穏やかな気持ちになれたのは、いったい、いつぶりだろうか。
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