2012/08/26
有名になることは決して良いことじゃありません
それは人間を高めはしない
創造の目的は 評判でも成功でもありません……
信州の田舎を舞台に描かれた「阿弥陀堂だより」とい映画の一節にこのような言葉がある。私の好きな作品であり、好きな言葉の一つだ。
そうした生き方を、まさに体現しているとも言える友が、今日、安曇野でイベントを開催した。
「安曇野平和祈念音楽祭&戦争と平和展 〜原発はいらない〜」
継続は力なり……、今年で12回を数えるそれは、実に感嘆の一語につきる。
これは、戦争の悲惨を殊更に見せつけようという苛烈な反戦的要素は少なく、平和への実感と継続の願いを静かに確認しあおうといった趣旨のものであるらしい。
主催者である小林和彦さんとその仲間たち「沖縄チャンプル」による演奏が始まった。
♪この国が平和だと 誰が決めたの……
と、サザンの桑田圭祐氏の歌〈平和の琉歌〉につづき、いくつかのオリジナル曲を披露した。
腎臓に持病をかかえる小林さんが話をはじめた……。
たまに入院するのも悪くないものですね。6月23日、 沖縄戦が終結した記念日に、病院のベッドでテレビのニュースを観ていたら、こんな歌が産まれました……。
「十六夜(いざよい)の月 ~沖縄慰霊の日によせて~」
♪ 水無月の空は鉛色の雲がわれて黒い雨が降る
……こみあげる寂寞(せきばく)の想い
彼はかねがね、先の大戦……とりわけ、沖縄での出来事をよく語りよく歌う人である。
齢は50を少し過ぎたくらいの青年晩期の男であるから、無論、戦時を知る由も無きながら、その歌には宛ら見てきた如きの説得力と哀しみにあふれている。
会の途中、福島からの被災者の意見陳述やボランティアなどの活動報告があり、終演に再び小林さんら沖縄チャンプルの面々が登壇した。
今日の日のために、テーマソングを作ったので皆で歌いましょう……!
歌のタイトルは単刀直入に「原発はいらない」とあるけれど、題名の印象とは異なり、まったく厳めしいものではなく、まるでラブソングのようなメロディーの清々しい歌であった。
♪ 願い事が叶うとしたら
ふるさとの大空を翔る鳥のように
この大地を自由にとびたい……
悲しみや涙も知らない日を返して
見せかけの平和や嘘などいらない
子供達の明日の笑顔が見たいから
小林さんの歌唱指導による客席を巻き込む大合唱は、あの、アリスのハンド・イン・ハンドを想わせ、目頭を袖に拭う人すら見られた。
さらに、私はそれに、21世紀版「翼がほしい」と命名したいと思った。
議論の言葉をつくすより、一遍の詩(うた)である。まさに「すべての武器を楽器に……」だ。
ギター1本で、人々の心に平和をもたらそうと本気で念望する彼を、私は羨望し支持しつづけたい。
誰かが言った……
「彼は安曇野の宝だね!」
ギター・ボーカル:小林和彦
ギター:合津征樹
ベース:市川啓介
キーボード:降旗厚樹
ドラム:中村青豊
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